関節、骨の保護

タイマッサージでは基本的に骨や関節は押さない。骨格は施術の対象外である。

施術の際には、骨、関節を損傷しないように気をつけなければならないが、それはどのような考え方で行ったらよいのか、具体例をあげながら説明する。

下の写真は、仰向けで脛の筋肉(前脛骨筋)を手根で押す手技である。このときに、膝関節が伸びきらず、膝とマットの間に隙間ができる人がいる。それを無視して押すことは正しいことか?

正しいとも言えるが、厳密には正しくない。
膝が伸びない原因には色々あるが、ハイヒールを履く等の理由で膝を伸ばしきらない歩き方をしていたり、運動不足や筋力不足によって膝関節の筋肉が縮んでしまっていることが多い。

この場合、膝を曲げる筋肉をストレッチにより伸ばしてあげることは良いことだ。前述の手技をストレッチと解釈するなら押すことは正しいことになる。

しかし、この手技は本来、膝関節をストレッチするのが目的ではない。前脛骨筋を押圧して解すのが目的だ。前脛骨筋への適正圧力はかなり高い。その圧力は膝を伸ばすのには強すぎる。結果的に、膝に対しては強すぎる力がかかるため危険である。かといって、力を緩めれば前脛骨筋を解す目的が達成できない。

ではどうすればいいかと言うと、手技の目的を一つに決めることである。前脛骨筋を押したいなら、膝の下にクッションを置いて膝を保護して、しっかり押す。膝を伸ばしたいなら、下の写真のテクニックで膝を伸ばすストレッチを行う。

ここで一つの疑問が沸いてくる。「膝をストレッチするにしても、強すぎるストレッチでは膝関節に悪いかもしれない。ストレッチをどの位までするかはどう判断すればいいのか?」

この疑問には明白な答えがある。

「気持ちのいいことをやりなさい」

相手に声をかけ、気持ちがいいか、痛いか確認する。表情を見てどう感じているかを類推する。体を触っている掌をセンサーとして使い、相手が痛がっていないか感じる。五感と会話を総動員して、相手の体の声を聞いて、気持ちのいいことだけをする。これが答えだ。実は骨や関節に適切なストレスを与えることは悪いことではない。気持ちがいい範囲でストレスを与えることで骨の成長を促し、骨密度が上がる。骨も生きているのだ。

タイマッサージは気持ちがいいと言われるし、気持ちがいいことをやりなさいと教えられる。その言葉は解剖学的にも非常に理にかなったことなのだ

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