解剖学を学ぶ必要はあるか?

タイマッサージを仕事にしている方は、「解剖学の知識も持っていないといけない」という強迫観念があると思う。お客さんに質問されたときに答えられないとかっこ悪いから、知らないで施術をするのは何となく不安、など理由は様々だろう。

では、タイマッサージをするにあたり、解剖学の知識は必要か?

条件付きだが、「解剖学を学ぶ必要はない」が、私の答えだ。

条件と言うのは、スタイルとして、ワットポースタイルやピシットスタイルのように、解剖学の知見から安全性を十分に考慮して構成された、近代のタイマッサージを行う場合である。これらの手技は基本に忠実に行う限り、まず怪我をさせることはない。それほど安全に設計されている。実際にワットポーで働くマッサージ師達は(一応解剖学の講習は終えているが)解剖学的なことはほとんど考えず手技を日々磨いており、スクールの30時間コースで習うベーシックマッサージを基本に忠実に正確に行うだけだ。小円筋とか僧帽筋とか筋肉の名前を覚えたところで施術が変わるわけでもないし、そんな解剖学の知識は役にも立たない。そんなことよりも、押すべきポイントの精度を上げ、圧を適正にする方がずっと大事だ。
そして、そんなワットポーの評価はどのマッサージサロンよりも高い。ワットポーのタイマッサージは解剖学を学ばなくても安全で、完全な効果を生み出せる偉大なスタイルなのだ。

しかし、チェンマイスタイルやピシェットスタイルのような「古式」タイマッサージを行う場合は話が違う。古い手技には、生半可な経験や知識で行うと危険を伴う手技が含まれている。だからその危険性を十分に理解していないと顧客に怪我をさせてしまう恐れがある。ワットポーの卒業生であっても、他の流派の手技を自分の施術に取り入れようと思ったとき、その手技が安全かどうかの判断ができないと危険である。

解剖学を学ぶメリットはいくつかあるが、手技の危険性を理論的に理解するというのが第一の目的だと言える。次回は、どのような手技が危険かについて説明する。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です