いいマッサージとは(4) – 解し方

凝った筋肉やトリガーポイントを指で感じられたら、次はこれを解さなければならない。その解し方というのは実に様々だ。

注射、鍼灸、オイルを使って指を滑らしたり、木槌で叩いたり、火に炙った足で踏んだりするものまである。

道具を使わない手技療法としては、指、掌、足、膝などを使って圧を加えるのが一般的だが、指圧だけを取り出してみても、垂直に押すだけでなく、弾いたり、揺らしたり、回したりと色々だ。

こういう外面的な違いに目を奪われると本質的なところは見えない。本質的なことを考えるために、施術者ではなく、施術される側の立場になって、目をつぶって感じてみる。

すると、道具を使う手技は別として、ほとんどの手技療法は要するに、自分の筋肉に対して圧を与えることに過ぎないことに気がつく。その圧の与え方は色々だが、物理的に分解すると、どこをタッチするか、時間軸に対して圧力曲線がどう立ち上がり、そして抜けていくか、そしてその圧が時間軸に対してどういう周期(リズム)で施されるか、それが違うだけだ。そして、その違いにより、神経を伝わる電気の感覚、そして他の場所にまで拡散する響きの感覚が異なってくる。上手な人が行うとその感覚は快感であり、下手な人が行うとそれは不快感となる。

その違いは何か?

結論から言ってしまうと、その違いは、ノイズの有無である。タイマッサージは音楽に例えることができる。タイマッサージが芸術だと言われるのもその「音楽性」にある。施術する姿勢が美しいから芸術なのではない。

音楽で重要なことは、まずは音色である。一つ一つの音の純度が高く、美しくなければならない。バイオリンという楽器が非常にわかりやすいが、初心者が弾くとノイジーで、不安をかき立てられるような、聞くに堪えない音しか出ない。ところが、名人が弾くと、同じバイオリンでも奇跡のように美しい音が奏でられる。どこが違うかというと、技術と心が違う。長期間にわたる練習と澄み切った心が美しい音楽を奏でる。

タイマッサージの指圧も同じで、滑らかに圧を上げること、下げることが相手の体の神経に美しい響きを生み出す。

タイマッサージの本質をわかっていない人は、どこをどういう順番で押すかを覚えたらタイマッサージをマスターしたつもりになってしまうかもしれないが、それはバイオリンの初心者がキラキラ星を何とか間違えずに弾けるようになったという段階に過ぎない。指圧ポイントと手順を覚えることは、タイマッサージを学ぶ出発点に立ったということに過ぎないのだ

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