治療マッサージの世界(4)

治療マッサージとは、トリガーポイントを見つけて除去するプロセスであり、以下のステップを踏む必要がある。

1)患者さんにどこが痛むか、何をしていたか等々詳しく聞く
2)背骨や骨盤など、姿勢の歪みを視診する
3)解剖学の知識に基づき、どの筋肉に問題があるか類推する
4)触診してトリガーポイントを見つける
5)筋肉に応じて、適切なテクニックでトリガーポイントを除去する
6)ストレッチを行って筋肉を弛緩させる
7)症状が改善したか確認する
8)改善しなければ3に戻る

痛みの原因は多岐にわたり、また、患者によってもトリガーポイントが出来る場所は異なるので、豊富な知識と経験がなければできない。リラクゼーションマッサージのように特定のシーケンスを行えばいいというものではない。これが、多くのスクールに短期間の治療マッサージコースがない理由である。本人のモティベーションやセンスにも左右されるため、特に大人数に一度で教えるようなスクールで治療マッサージを教えることは通常不可能である。

ところが、バンコクのピシットタイマッサージトレーニングスクールにはレベル2(上級コース)として60?120時間で習得できる治療マッサージコースが用意されている。しかも内容は、症状別に、決まったシーケンスを行うだけである。解剖学の知識が余りなくても、まるで、基礎コースを覚えるように順番を覚えるだけで習得できるものだ。

なぜ、そんなことが可能なのか? ピシット先生は、先生の元を訪れる患者さんを治療しているうちに、ほとんどの患者さんは10程度の典型に分けられることに気がついた。上記治療マッサージのプロセスで治療を行うのだが、長年行っているうちに、こういう症状のときはこれをやれば間違いがない、というようにパターン化することに成功したのである。例えば腰痛はどこが痛いかによって2?3パターンに分けられ、そのパターンに応じて、指圧とストレッチ、そして筋肉を動かしたり揺らしたりする手技を組み合わせる。これでほとんどの症状が治ってしまう。もちろん指圧する際には、トリガーポイントを指先で見つけて命中させる触診力は必要なので、一応、一年以上のマッサージ経験がある人が対象のコースとなっている。しかし、10分程度の定型手順で症状が改善するというのは驚くべきことだ。なぜそんなことが可能かというと、ストレッチテクニックが豊富で強力だからだ。ストレッチだけで治ってしまうことも多々ある。ストレッチならばトリガーポイントを見つけられなくてもできるし、患者さんが家で自分で行うこともできる。ピシット先生の治療マッサージコースは、長期の経験も必要なく、また、比較的短期間で習得できる素晴らしいコースである。

寿司や大工の職人の世界では、「見て盗め」とか言って、弟子を長年こき使いながら技術を出し惜しみするのが、経験や知識を安売りしない一つの手法となっているが、手技療法の世界も例外ではない。ところが、ピシット先生は例外的に、自分の長年の経験を一つのコースにまとめ、惜しげもなく教えているところが素晴らしい。

ピシットタイマッサージスクールJapanでは、バンコクでのレベル2のコースを忠実に再現するだけでなく、さらに、個々のシーケンスを行う解剖学的な意味や、トリガーポイントの見つけ方について丁寧に説明することを心がけている。もちろん、タイマッサージで治療をうたうことは法的に問題があるが、ピシット先生のテクニックはすべて安全性が十分考慮されているので、リラクゼーションマッサージのシーケンスの流れの中に挿入し、痛くない程度に行うことで驚くべき効果が得られる。セラピストとしてステップアップするきっかけとなるだろう

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