いいマッサージとは(7) – リズム

指圧によって発生する、神経を伝わる響きは、音楽の音のようなものであり、音色の美しさが大事なことはこれまでに述べた。もう一つ大事なことは、音の間隔である。指圧はどういうリズムで行うのがいいのか?

これは、理論的に考えるとよくわからないのだが、経験則から、呼吸のリズムが望ましいことがわかっている。つまり、吐く息に連動させて腰を持ち上げて圧を入れ、吸う息に合わせて腰を下げて圧を抜く。呼吸と連動させた体重移動は滑らかで深い圧を入れるにも適しているが、そのリズムも快適さの重要な要素だ。
なぜそうなのかは、音色を楽しむのにそこそこの時間が必要だからではないかと考えている。以前、テレビを見ている時に指揮者の小澤征爾が、オーケストラの弦楽器走者に「ここは、もっと、歌って、十分に歌って!」と指示していた。歌うというのは音色を十分に共鳴させ、響かせるというような意味である。カラオケで歌う際も、音階を追うだけでなく、喉の共鳴を十分に効かせて声を響かせるべきところがある。音が十分に響くのを聞くのは、おいしい料理を味わうようなものだ。それには時間が必要だ。

タイマッサージで、音色を楽しむための適切な「歌う」時間が呼吸のリズムになる。これより長いとくどいし、短いと物足りない。施術の最初から最後まで乱れぬ呼吸のリズムで行う理想のタイマッサージだ。

呼吸のリズムで行う流派の代表がワットポースタイルだ。タイ厚生省スタイルやピシットスタイルも呼吸の連動を重視する。

チェンマイスタイルやシンチャイ先生が得意とする四指を使ったクロスファイバーストロークは、呼吸と連動していない。そもそも指圧するときに腰を持ち上げないことが多く、指を歩かせるように移動していくので、呼吸よりも早いリズムで指圧を入れていくことになる。それでも、上手な人が行うと、響きを歌わせることはできる。呼吸と連動しないリズムでもそれは音楽であり、どちらの音楽が好きかは、好みの問題だろう。

ただ、私はやはり、呼吸と連動している方が気持ちいいと思うし、また、呼吸と連動させた腰の上下運動で指圧を行えば、初心者でも比較的容易に歌わせることができるので、ピシット、タイ厚生省、ワットポーはスタイルとして優れていると思う

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